「日本人の海外留学は増加に転じたのか?」留学統計の留意点
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日本人の海外留学者の数は増加に転じている(文部科学省2016)。
文部科学省資料は、OECD等と日本学生支援機構の2種類の統計を引用している。OECD等統計では、最大は2004年の8万2945人、その後のボトムは2011年の5万3991人で、2012年には6万138人に前年比で増加している。OECD等統計の外国人学生数は1983年から2012年まで継続し、2013年で対象者が学位取得を目的とした外国人学生数に変更になっており、継続性がなくなった点に注意が必要である。
日本学生支援機構統計では、2009年の3万6302人(うち6カ月以上、9580人)から2014年の8万1219人(同、1万4848人)へと2倍以上に増加している。日本学生支援機構には短期留学が含まれ、OECD等には短期留学が含まれない。しかし2012年には、両者の数字は近接していた。日本学生支援機構統計は歴史が短く、同機構に協力する大学が増えるだけでも数字が増える可能性がある。ここにも注意したい。
日本学生支援機構統計から、短期留学、語学研修も含めた広義の「留学」は増加しているのは確実だろう。2013年のOECD等では5万5350人で、2012年の6万138人から減少しているものの、学位取得を目的としない学生を除いたことを考えると、こちらも増加基調にあるのだろう。そもそも日本人の若者人口が減少していることも考慮に入れると、留学をする学生の割合が上昇している可能性は、実数の推移よりは高くなる。
ただし文部科学省が日本学生支援機構を通じて「日本人の留学生」数を把握し始めたのが2009年以降だとすると、リーマン・ショック後の景気対策の中で生まれた高校や大学向けのグローバル予算の時期と符合する。それまでは文部省として「日本人の留学生」数を把握するニーズが低かったと言えるのかもしれない。
次に、産業能率大学が2001年から2015年まで3年おきに、新入社員の海外勤務希望をアンケート調査している。これによると、2001年の70.8%から2015年には36.3%に低下している。留学統計と時間的差異があるものの、日本人の留学が増えることで、新入社員の海外勤務希望増加につながるのか、2018年の次回調査結果が楽しみである。
出所:文部科学省(2016)「日本人の海外留学状況」http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/__icsFiles/afieldfile/2016/04/08/1345878_1.pdf(アクセス2016年10月16日)
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