黒田龍之助(2011)『大学生からの文章表現』ちくま新書、筑摩書房

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大学授業形式で書かれている。
日本語文章教室だが、縦書きではなく横書きであることも特徴だ。

第3章形式 ワンパターンからの脱出では、形式を整えるための3原則が示されている。
1.「思う」を使わないこと
2.冒頭を「わたしは」で始めない
3.(笑)はなるべく避ける

1は、「行う」や「という」などと同じで、表現の多様性、まさにワンパターンからの脱出の原則だ。
2は、小学生のようなお子様文章からの卒業の原則である。
3は、マスコミ志望者やビジネスパーソン相手では、簡単には思いつかないものだった。インターネット世界で育った今どきの若者を想定した実用的なアドバイスだ。

(笑)はなぜダメなのか。
まず、手垢にまみれ、何の新鮮味もない記号ではなく、もっと工夫をこらしてもらいたいのである。
もうひとつは、(笑)を使った文で面白いものは1つもないと、黒田先生は断じている。。

今どきの大学生を知り尽くした文章表現の一冊と言える。

参考リンク
マスコミ就職の文章教室「わかりやすい文章表現」

小生にとって、最初の作文の指導教員の書籍

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文部科学省、バカロレア認定インターナショナルスクール200校計画、最低でも毎年6000人程度の高校生が海外へ流出

実現すると、東京大学秋入学以上にインパクトがありそうな記事を見つけた。

「海外大入学めざせ、200高校に留学支援課程」2012年3月21日の読売新聞によると、
文部科学省は、世界の大学が採用する共通の大学入学資格取得に必要な教育課程「国際バカロレア(IB)」の国内認定校の拡大を目指す。今後5年間で、認定校と、新たにIBに準じた教育を行う高校を計200校にする計画。学校数では英国並みになる。

国別IB認定高校数
米国759
英国203
カナダ142
インド79
豪州63
メキシコ58
スペイン56
中国52

国際バカロレア(International Baccalaureate)認定校とは、いわゆるインターナショナルスクールだ。
国際バカロレア機構によると、国際バカロレアの国内認定校は現在22校、高校レベルは15校。
文部科学省も2012年3月現在として、この数字を引用している。

DP(高校生レベル?)資格取得者が2010年で445人とある。一校あたり29.66人、約30人。
各学校に一クラス程度の人数である。
200校×30人=6000人
センター試験受験者が55万人なので、1%程度の生徒に相当する。

新興国のインドや中国より学校数は少ないという指摘も予想されるが、両国は日本の10倍以上の人口規模である。

もし国際バカロレア認定校を推進する大規模高校が出現すると、最大1万人規模の大学受験生が海外流出する可能性がある。

文部科学省の学校基本調査によると、海外で1年以上滞在した帰国子女が1万人いる。上記の予想とも符合するサイズだ。帰国して1年度が経過すると、統計上は、帰国子女にならないため、推計するとのべ7万人程度の帰国子女がいる。ここが母集団になるだろう。帰国子女の中心は小学校のため、高校生の段階で海外志向をどの程度まで維持していけるかという指摘も予想されるだろうが、東京大学秋入学以上に、インパクトのあるニュースだと思う。

海外企業や外国人滞在者が飛躍的に増えたり、海外の高校に在籍する日本人が帰国したりしない限り、主な対象は日本に滞在する日本人となる。実現すれば、東京大学、京都大学、東京工業大学、一橋大学、大阪大学、名古屋大学、神戸大学、東京外国語大学など国立大学や早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学からMARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)や関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)まで大きな影響が出うるだろう。

ただし全寮制などでアジアから留学生を引き受ける戦略なら、日本人の母集団に制約されない。この方がインターナショナルになる。海外を目指すのなら、首都圏の立地にこだわる必要性も低下する。

それにしても、現状の10倍近い200校は挑戦的な数だろう。文部科学省は読売新聞の記事を通じて反響を見極めているのだろうか。100校程度で落ち着いても、日本の教育界にとって開国を促す政策になる。

国際バカロレアの認定校
セント・メリーズ・インターナショナルスクール 東京都 1979年9月○
カナディアン・アカデミー 兵庫県 1980年9月○
サンモール・インターナショナルスクール 神奈川県 1984年7月○
横浜インターナショナルスクール 神奈川県 1984年10月○
清泉インターナショナル学園 東京都 1986年1月○
関西学院大阪インターナショナルスクール 大阪府 1990年10月○
加藤学園暁秀高等学校・中学校 静岡県 2000年1月○
ケイ・インターナショナルスクール東京 東京都 2002年1月○
広島インターナショナルスクール 広島県 2005年4月○
東京インターナショナルスクール 東京都 2005年12月
神戸ドイツ学院           兵庫県 2006年6月
京都インターナショナルスクール 京都府 2006年12月
福岡インターナショナルスクール 福岡県 2007年4月○
名古屋国際学園 愛知県 2008年5月○
玉川学園中学部・高等部 東京都 2009年3月○
AICJ中学・高等学校 広島県 2009年6月○
立命館宇治中学校・高等学校      京都府 2009年9月○
カナディアン・インターナショナルスクール 東京都 2009年12月
東京学芸大学附属国際中等教育学校 東京都 2010年2月
沖縄インターナショナルスクール 沖縄県 2011年7月
ぐんま国際アカデミー 群馬県 2011年10月○
つくばインターナショナルスクール 茨城県 2011年11月
出所:文部科学省http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/1307999.htm

関連ブログ記事
灘、開成、桜蔭は、海外大学を目指していくのだろうか?

参考文献
国際バカロレア機構「IB World School statistics」(2012年3月23日アクセス)
http://www.ibo.org/facts/schoolstats/progsbycountry.cfm
文部科学省「国際バカロレアについて」(2012年3月23日アクセス)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/index.htm
読売新聞「海外大入学めざせ、200高校に留学支援課程」(2012年3月22日アクセス)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20120321-OYT8T00594.htm?from=tw
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上質なジャーナリズムには投資が必要、映画とDVDの関係と同じ、電子書籍にも通じる

英国のビジネス紙FT(フィナンシャルタイムズ)の電子版を講読している。5年間くらいになるだろうか。

今まで気づかなかったが、Wordにコピーandペーストすると、冒頭に警告がなされている。

最初のフレーズを翻訳すると、上質なグローバル・ジャーナリズムには投資が必要だ。
High quality global journalism requires investment. Please share this article with others using the link below, do not cut & paste the article. See our Ts&Cs and Copyright Policy for more detail. Email ftsales.support@ft.com to buy additional rights.

FTには、twitterやFacebookのボタンも無い。無いことで上質性をブランディングしているかのようだ。

試しに日本語検索すると、上記の警告をつけたまま、ブログに貼り付けられている記事が結構ある。

WSJウォールストリートジャーナル、日本経済新聞、朝日新聞の有料購読でも試したが、
ここまで、わかりやすい警告機能は付されていない。

ビジネスウィーク電子版に転載されたAP電で、ニューヨーク・タイムス有料化一年で、無料ニュースアクセスを、これまでの月20本から10本に制限すると報じていた。これは日本の新聞社も追随tしていくかもしれない。
http://www.nytimes.com/subscriptions/Multiproduct/lp6128.html?adxc=181564&adxa=295211&page=www.nytimes.com/growl&pos=Left9&campaignId=39UJU
http://www.businessweek.com/ap/2012-03/D9TKH5NO0.htm

1990年代前半、ペン入力機能のあるワープロを商品化したシャープと、細々と電子新聞の勉強会を実施していた。

iPadなどハードや通信環境が飛躍的に改善しており、ようやく有料化の条件が整ってきたと言えそうだ。

日本の電子化が遅れた理由はいろいろ指摘されているが、人口密度の違いも大きいと思う。
人口密度が高い市場のため、書店や新聞販売店など対面のネットワークが網羅されていた。

紙と電子媒体の二重投資は、既存のメディアの重荷かもしれないが、有料化に本格的に取り組む動きが加速されるのだろう。

映画など映像ははDVDなど二次利用の権利ビジネスを確立させている。
映画館で上映し、一定期間の後に、テレビ放送やDVD販売を開始する。
電子書籍も、古典や絶版本などアーカイブから入れば、スムーズに市場化拡大する可能性はありそうだ。日本でも、有斐閣YDC1000が4月から有料化に移行する。

5年もすれば、ヤフージャパンのようなポータルサイトから拾えるニュースのバラエティも相当変わっていることだろう。同時に読売、朝日など一般紙や地方紙は、文字の拡大で減らした字数を増やすなどいくつかの工夫が必要か。
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大使館を増やせば、資源が獲得できるのか?

玄葉光一郎外相は3月17日、在外大使館の数を現在の134から約150に増やすように指示したと発言。
アフリカや中南米などの新興国を中心に新設する、とある。
記事は、「資源外交」を強化するのが狙い、と説明する。
土佐茂生「大使館、150カ国に拡充へ 外務省、資源国中心に」朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/politics/update/0318/TKY201203170615.html

これまでの外務省の方針が改めて繰り返された。

資源外交とは、外交努力で資源獲得を促進するという意味だろうか。
資源外交という言葉は、国内の世論や予算獲得には効果的かもしれない。
一方、外交的に、相手国に対して、資源獲得のために大使館を新設するとは、使えないロジックだ。日本で通じる論理が、外交で通じるわけではない。

外務省は、在外公館の新設の判断材料を例示している。
1.安全保障を含む二国間関係における政治的意義
2.資源獲得を含む経済上の利益
3.邦人保護及び日系企業支援
4.国際機関選挙での票獲得を含む当該国の国際社会での位置付け

総合的に判断する。この方が外交の現実味が伝わる。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/yosan_kessan/teigen_shiwake/h23/pdfs/zaigai_seibi.pdf

大使館を増やせば、資源が獲得ができて、国連常任理事国になれるわけではない。

資源の宝庫として期待されるアフリカで、大使館が設置されていない国は紛争を抱える。
紛争国では、武器輸出が相手国政府が歓迎する経済関係ということもあるわけだ。

そして、イランは、日本がこれまで積極的に資源外交していた国である。しかし米国が求めたイラン原油の輸入削減に日本も協力せざるを得なかった。

日米関係が最上位にある中、イラン問題は、資源外交とは限られた選択肢という現実性を、我々に教えているかのようだ。